大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡家庭裁判所 昭和46年(少)1742号 決定

少年 T・U(昭三一・八・二九生)

主文

少年に対し強制的措置をとることを許可しない。

理由

少年に対する本件送致事由の要旨は、「少年は、小学校四年生頃より現金窃盗などを犯して昭和四二年九月より昭和四四年八月まで教護院である福岡学園に入所措置され、同学園退院後再び強制わいせつなどにより同学園に入所措置されたが教護不適応との判断を受け、昭和四六年六月一〇日には教護院山口県立育成学校に入所措置されたものであるところ、同年七月二〇日同学校を脱走し帰校を拒否している。少年の家庭は、父死亡、母家出し、保護者は生活保護を受けている祖母であり、少年に影響力をもつていた叔父の説諭ももはや効果がない状態になつている。以上のとおり、少年に対しては、開放施設における教護育成が著しく困難であるから、一〇カ月の期間特別措置をとり得る教護院(国立武蔵野学院)において内省の機会を与えたく、本申請に及ぶ」というにある。

当裁判所の事実調査の結果によれば、概ね上記送致事実どおりの事実が認められるけれども、少年については、昭和四六年八月二七日当裁判所において窃盗保護事件として初等少年院送致の決定がなされていることは記録上明らかでありそうすると、既に少年に対し収容保護がなされた以上本件強制措置申請はこれを許可する必要がないのでこれを許可しないこととし、主文のとおり決定する。

(裁判官 武田多喜子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例